18JMX Rd.5 KYUSHU
「言葉にできないくらい嬉しい。3位を重ねてやっと優勝に辿り着いた。」表彰台のコメントに山本の思いが溢れる。昨シーズン、タイトル争いがいよいよ佳境となる時期に投入しされた先行型のマシン。そのセットアップが思うように捗らず、山本は苦渋を舐め続けていた。予選でトップタイムを叩き出し、スタートではホールショットの常連。そこに何か問題が潜んでいるとは、誰も想像しなかったに違いない。その一方で、まだ世に出ない、次の世代のマシンを産み育てるのもワークスライダーの仕事だ。山本はレースで結果を残すことと同時に、その「仕事」に取り組んできた。今季初優勝、しかもパーフェクトVという快挙の舞台となったのは、山本が乗るマシンが開発、製造される正しくホームだった。このコースで絶対的な強さを誇ってきたチームメイトの成田は、予選で手首を痛め精彩を欠いていた。バトルの相手は小方と新井。ビッグチームのホンダに対しカワサキファクトリーの二人は、こちらも新たに投入したニューマシンで、開幕からしっかりと結果を残してきた。正に負けるわけにいかない。ロングフープスを過ぎた左コーナーへの進入。そこがレースのポイントになっていた。手前のダブルを跳んでアウトからスピードを乗せる小方に対し、山本は無理をせず、インから小方の行く手を抑えるラインをトレースしていた。しかし、このままでは勝てないと判断した山本が小方と同じようにジャンプを飛び始める。マシンへの不信が信頼に変わる。ゼッケン1が久々に輝きを放った瞬間だった。