HYPER MXINGメンバーコンテンツ「開幕戦で何が起きたか!?」2021第1戦を振り返る。

新生全日本と言っていいだろう。制度や運営スタイルが大きく様変わりして迎えた開幕戦九州大会。そこで何が起きたか、順を追って振り返ってみたいと思う。

コロナ禍での開催も今回で3度目。土日合わせて2千人を越えるファンが観戦に訪れた。

会場のHSR九州に到着すると、もうここ何年かずっとそうなんだけれど、本当に最高のコースが用意されていた。同じレイアウトやコンディションを維持する方向のメインテナンスがある一方で、常に進化させている取り組みとでも言ったらいいのだろうか。コース上だけでなく、法面まで丁寧に均し押し固めて見栄え良くするのが、コースオペレーションを受け持った長田君のこだわりなんだと思う。万年ノービスのボクが見ても、ここも走れる、あっちも行けそう。こことここは絶対分かれるな…という感じで、幾つものラインが想像できた。ただ少々気になったのは、コース上の土がパサパサだったこと。モトクロス経験のある人ならご存じだと思う。コースの土は走行につれて粒子が細かくなり、そのまま使い続けるとあっという間にパウダー状態になってしまい、一度舞い上がったホコリが降り積もって、その連鎖が続くとまるでザラメがケーキに振りかける粉糖になったみたいにパフパフになるのだ。例年になく早い春の訪れ。この週末朝夕は冷え込んだが日中は汗ばむほどの陽気になった。しかもずっといい天気が続いていると聞いて、散水は間に合うのかなぁと心配になった。

豪快にルーストを巻き上げるチャンピオン山本選手。その瞬間はカッコいいんだけれど、後から走って来るライダーは、細かい粒子の砂ぼこりをモロに浴びることになって、マシンともども大変!?

その心配は、土曜日朝一番の練習走行から現実となってしまう。阿蘇方向からやや強めの風が吹いていて、高く舞い上がった大量の砂ボコリを西へと押し流していく。土曜日の練習走行はJX→LMX→IA2→IA1と進んだのだけれど、450のハイパワーをフルに使い切るIA1の走行が開始されると、やや緩い登り勾配になっている前半奥からの折り返しストレートなんかは、もう、絶対に前見えてないよね?っていうくらいにホコリモウモウ状態になった。そういえば、九州大会っていつも土曜日は散水しないんだよなぁ。せっかく掘り返した土が飛んじゃうよなぁと思いながらなるべく風上から様子を見ていたら、あるオフィシャルさんがショッキングな事実を教えてくれた。「この前の地方選のときにトイレに廃油を捨てた人がいたらしくて、ここのトイレって自前の浄化システムを使ってて、全部ダメになっちゃったんだよね。数百万の損害だったらしい。本当は新しい砂を入れる計画とかもあったんだけど、そんな予算も飛んでしまって、それどころか、もうコースを使わせないってハナシまで出たらしいよ。」………正直言葉を失った。
ただでさえコロナで大変なのに、少子化だのガソリンエンジン止めましょうだの、モトクロスを含めたモータースポーツが直面する難題はそれこそ阿蘇の外輪山くらいに立ちはだかっている。そんな窮地をなんとか乗り越えようとみんなで頑張っているハズなのに、関係者がそんなことする? 心ないって言葉があるけど、良識も常識もいくらなんでもなさ過ぎでしょう。交差点の植え込みにゴミを捨てたり、高速やスーパーの駐車場で車椅子のスペースだってわかっててクルマ停めちゃうとか、モトクロスの関係者は絶対にやらないと思ってたのに。もうほんとガッカリ。

移動での無理が祟って土曜日午後の記憶があまりないんだけど、IA2は大城と内田。IA1は山本が速くて、決勝もこの3人が中心になるんだろうなと思った後、IB OpenのH1。村野二世晟弥君が頑張った。去年ほんと恐いくらいの大怪我したんだよね。若さってスゴい。完全復活本当におめでとう。…で風呂へ(笑)。耳の中から鼻の中まで入念に洗ったつもりだったけど、アイボン忘れてきて、朝目が覚めたら視界が霞んでて、ルームミラーで自分の目を見たら笑っちゃうくらい白目が赤かった。ライダーはゴーグルしてるからいいけど、お客さんやオフィシャルさんは大丈夫だったのかなぁ。

ゴーグルトラブルでパウダーダストの洗礼をモロに受けることになってしまったH2の山本選手。

迎えた日曜日。夜の間に散水してくれたのかなぁと期待してたけど、残念ながらそうでもなくて、これは今日も埃まみれになるんだなと覚悟。そんな中、決勝はどのレースも本当に面白かった。特にIA1のトリプルヒートだよね。正直去年の2戦はもうあと一つ物足りなくて、20分+1周が最後のバトルもありそうだし、いいんじゃね?って思ってたんだけど、ここで今回のレイアウトが生きたよね。ライダーも戦い方になれたのか、ほんと、これがレースだろっていうくらいにお腹一杯になれた。チャンピオン山本選手には相当残念且つ悔しいレースになってしまったが、富田、渡辺が所属するヤマハ・ファクトリー・レーシングチームは、山本選手のワークスサポートとか能塚選手の開発チームとかじゃなくて、戦って勝つための純然たるワークスチームなわけで、ヒート1で山本を巻き込んで自分も転倒してしまった富田の仕掛けはさすがにイエローだけど、ギリでレッドじゃないっていうのは戦法だもんね。個人的にはMXINGのインタビューに登場してもらった能塚選手が、期待通りのダークホースぶりを発揮してくれて嬉しかった。ヨッシーの解説は良かったこど、IA1クラス唯一の地元九州ライダーなわけだし、MCさんもっともっと煽っていいのにね。

クラス初優勝の表彰台で「コケロビームが効きました。」とおどけて見せた能塚選手だったが、渡辺、富田、山本を置き去りにし、小方選手とのバトルを制したヒート3の勝利は正に圧巻だった。

あとレース後の再車検という名の音量測定。H2の能塚が失格で山本はセーフだったんだけど、どう考えてもこれは腑に落ちない。なんか測定マイクを後ろに置くから横の音は拾わないとかいう説明だったけど、明らかに音がうるさかったのは山本号だったし、もし外れたとか割れたとかたったら、そもそも車検通らない状況だろうし。でもこれもルールに則って審議で出た決定だから、あれこれ言っても仕方ない。

審査が終わるのを待っていたのだろうか、たった1台車検場に取り置かれた山本選手のマシン。

そんなこんなであっという間にレース終了。山本の怪我が心配だけど、フルスケールに戻る第2戦以降、そして再びトリプルヒートでまみえる第4戦SUGOと巻き返してもらおうじゃないですか。ライブタイミングが見難いとか、ナントカいうアプリがかなり使えないとか、そもそもオフィシャルの情報の出方がバラバラで分かり難いとか、そういうネガはいっぱいあったけど、これも回を重ねる毎に改善されるハズ。ただ、IAとLMX10名の赤ゼッケンは、正直いらなかったですね。スタート前の散水でいきなり黒土付いて何色かわかんなくなっちゃってたし、次の第2戦で渡辺と内田と川井がランキングトップだっていう情報も見えなくなってしまうし。

レッドプレートホルダーになっていたハズの渡辺選手。

とここまで書いて、もう一つ気になっていたポイントスケールのこと。究極のタラレバだけど、こんな計算してみました。題して去年だったらどうなってた?  って去年のポイントスケールで総合成績出してみただけですけどね。

昨シーズンまでと今年のポイントスケールを比較してみた

2021スケール2020スケール
1位251位との差1順差251位との差1順差
2位20-5-522-3-3
3位16-9-420-5-2
4位13-12-318-7-2
5位11-19-216-9-2
6位10-15-115-10-1
7位9-16-114-11-1
8位8-17-113-12-1
9位7-18-112-13-1
10位6-19-111-14-1
11位5-20-110-15-1
12位4-21-19-16-1
13位3-22-18-17-1
14位2-23-17-18-1
15位1-24-16-19-1
16位5-20-1
17位4-21-1
18位3-22-1
19位2-23-1
20位1-24-1
1位と2位の差が3から5に広がったのも大きいが、1位と5位の差は10ポイントも拡大。

IA1クラス2021暫定ランキング(第1戦終了時点)

1位3渡辺 祐介(Y)56
2位5能塚 智寛(K)50
3位2富田 俊樹(Y)49
4位4小方 誠(H)46
5位1山本 鯨(H)37
6位8星野 優位(Y)34
7位6小島 庸平(H)25
8位10横澤 拓夢(H)25
9位16池本 凌汰(KT)19
10位7大塚 豪太(H)18
11位28町田 旺郷(Y)18
12位12星野 裕(S)16
13位19安原 志(K)11
14位14道脇 右京(H)9
15位05西 元気(S)3
16位29小野 千成(H)2
17位18道脇 白龍(H)1
18位15大石 一斗(Hu)1
優勝者が有利にというコンセプトが活きた開幕戦の総合順位。

IA1クラス2020ポイントスケールランキング(第1戦終了時点)

1位3渡辺 祐介(Y)64
2位2富田 俊樹(Y)59
3位4小方 誠(H)57
4位1山本 鯨(H)51
5位5能塚 智寛(K)50
6位8星野 優位(Y)49
7位6小島 庸平(H)40
8位10横澤 拓夢(H)40
9位16池本 凌汰(KT)34
10位28町田 旺郷(Y)33
11位12星野 裕(S)31
12位7大塚 豪太(H)28
13位19安原 志(K)26
14位14道脇 右京(H)24
15位05西 元気(S)18
16位29小野 千成(H)14
17位18道脇 白龍(H)12
18位15大石 一斗(Hu)11
19位17宗本 駿真(Y)10
20位07上原 巧(S)8
21位25沼田 誠司(K)3
22位21白石 翔也(Y)1
去年だったら能塚は5位。逆に考えれば勝ち続けることで窮地からの挽回も可能になる。

IA2クラス2021暫定ランキング(第1戦終了時点)

1位4内田 篤基(K)45
2位2大城 魁之輔(H)45
3位7川上 龍司(Y)23
4位10中島 漱也(Y)23
5位11小川 孝平(Y)21
6位8岸 桐我(Y)20
7位15鈴村 英喜(H)19
8位34柳瀬 大河(H)18
9位9池田 凌(K)15
10位35鳥谷部 晃太(Y)13
11位17鴨田 翔(K)9
12位21神田橋 瞭(K)8
13位01福村 鎌(S)5
14位22森 優介(H)5
15位19真野 凌輔(S)4
16位41瓜生 大喜(Y)3
17位04佐竹 涼冴(Y)2
18位29斉藤 崇(S)1
19位38近藤 雄紀(S)1
IA2に関して大きな変動はなかったが、3位以下のビハインドが大きく拡大。

IA2クラス2020ポイントスケールランキング(第1戦終了時点)

1位4内田 篤基(K)47
2位2大城 魁之輔(H)47
3位7川上 龍司(Y)33
4位10中島 漱也(Y)32
5位11小川 孝平(Y)31
6位8岸 桐我(Y)29
7位15鈴村 英喜(H)29
8位34柳瀬 大河(H)28
9位9池田 凌(K)25
10位17鴨田 翔(K)19
11位21神田橋 瞭(K)18
12位35鳥谷部 晃太(Y)18
13位29斉藤 崇(S)11
14位04佐竹 涼冴(Y)11
15位01福村 鎌(S)10
16位22森 優介(H)10
17位19真野 凌輔(S)9
18位41瓜生 大喜(Y)9
19位24小笠原 大貴(Y)8
20位38近藤 雄紀(S)6
21位43古賀 翼(K)5
22位33那須 伊雪(Y)4
23位14佐々木 麗(Y)2
24位101富岡 寿弥(H)1
IA1同様に去年までのスケールならランク入りできたライダーが5名。1ポイントの獲得が今まで以上に困難で重要になった。

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