15JMX Rd.9 KANTO
勝ってタイトルを決めるというシーン、過去に何度出会ったろう。例え十分なアドバンテージを得ていたとしても、ポイント差とリスクを計算し、ライダーはどうしても慎重にならざるを得ない。2015全日本モトクロス第9戦関東大会。富田俊樹はそんなプレッシャーさえ、まるで関係ないという強い走りで2度目のタイトルをもぎ取った。「去年までは勝谷さんっていう強いライバルがいたけど、今年は勝谷さんがいないシーズンで、勝って当たり前だし、むしろ能塚なんかに絡まれるレースもあって、これでいいのかって感じでした。」その発言はあくまで強気だ。
初めてその名を聞いたのは、Jr.85時代。当時はTEAM HAMMERのライダーだったと思う。その後BSAを経てT.E. SOPRTへ。一発の速さはあるが最後まで持続しない。シーズンのどこかで必ずクラッシュして姿を消してしまう。数年前まではそんなライダーだった記憶がある。「もっと速く走れるハズ、速く抜かなきゃって攻めて行ってクラッシュしてましたね。」と富田は当時を振り返る。最初の全日本タイトルは2006年のIB2、そこからIA2タイトル獲得までに7年を要した。昨シーズン、勝谷に連破を阻まれた富田は、肩の古傷を治療し、万全な状態を得てシーズンを向かえた。と言っても乗り始めたのは3月。調整不足は否めない。一方でチーム内には成田、小方という最良の手本があった。2013年MXGPタイにスポット参戦、同年MXoNドイツ大会の代表にも選出された。今年はAMA、2度目のMXoN参戦で大きな成果を手にした。
未来を嘱望され、低迷があり、自ら這い上がる。「そういえば、マディ強いよね?」という質問に「金沢も冬場はずっと雪か凍ってるかなんで、嫌いだけど乗れって言われてましたから。それは成田さんと似てるかも。」という答えが返ってきた。いつも笑顔に包み隠してはいるが、そう言われてみれば、負けん気の強さも成田に似ているような気がする。どこまで成長するか。「早く決めて、最終戦では海外のトップライダーにどこまで通じるか楽しみたい。」そう語る富田の前に、世界への扉は既に開かれている。