17JMX Rd.1 KYUSHU

ゴール直後、再び雨が降り出しそうな重い空気の向こうから、2度3度大きな雄叫びが聞こえてきた。日本のレースでライダーがあれほどまで感情を露にするのを見た記憶がない。声の主は、マディコンディションのタフなレースで、激しい追い上げの末に最終ラップの大逆転でクラス初優勝を飾った山本 鯨。言動も行動も、モトクロスライダーの中では珍しくと言っていいくらい、礼節を持ち合わせたアスリートだ。世界選手権に参戦した3シーズン、在籍していたのはイタリアのチーム。いつしか彼の体内にラテンの血が通うようになっていたのかもしれない。そして、あまりに長い間勝利から遠ざかっていた。グランプリでの3年間は、負け続けと言われても仕方のない成績だった。苦しく厳しい戦いの中でしっかりと力を付け、復帰した全日本、初めて挑むIA1クラスで、その実力を立証してみせた。「やっと戻ってきました。」表彰式での第一声は、もちろん「日本に」ではない。一番高い勝者のポジションだ。

通算150勝の記録達成を目前に、破れた成田も山本の速さを認めていた。舞台となったHSR九州は、成田にとって最も相性のいいコースだった。2011年に全日本最多の勝利数を100勝の大台に乗せたのもこのコース。5年連続開幕パーフェクトVという記録も含め、6年間負け知らずの場所だった。「36歳、まだまだ頑張るが、次からは追う立場として益々やる気が湧いてきた。」と山本より一段低い場所でインタビューに応えた成田。全日本最高峰クラスの新たなドラマが幕を開けた。戦いは第2戦関東へと続く。


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